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<2/2015>
2月13日 (金)      
水島健
「超流動3Heから観る対称性によって守られたトポロジカル相の物理」


近年、トポロジーに基づいた新たな物質観が広がりをみせている。 超流動3Heは異方的超伝導研究の雛形として多くの研究者を惹き付けてきたが、 最近ではトポロジカル超伝導物質の教科書的物質として再注目されている。
本セミナーでは、超流動3Heを軸としてトポロジカル超伝導と対称性の蜜月な関係性を詳しく解説する。 超流動3HeのB相は時間反転対称性によって守られたトポロジカル相であるが、 有限磁場下においてもB相のトポロジカル超流動特性とマヨラナ粒子が存在し得る[1,2]。 このトポロジカル相は時間反転操作とスピン・軌道回転操作を組み合わせた 離散対称性によって守られている。さらに、この「離散対称性によって保たれたトポロジカル相」が 「離散対称性を自発的に破った非トポロジカル相」へと相転移する臨界磁場が存在する。 この自発的対称性の破れを伴うトポロジカル相転移は、 従来のトポロジカル超伝導理論では説明できない新しい量子現象であり、 トポロジーと対称性の関係性が顕在化した典型例である。
超流動3Heと類似したトポロジカル超伝導特性を持つ重い電子系超伝導UPt3[3]や トポロジカル絶縁体を母物質とした超伝導体CuxBi2Se3等の研究の現状[4]に触れながら、 超流動3He研究の重要性や今後の課題を共有したい。

[1] T. Mizushima, M. Sato, and K. Machida, Phys. Rev. Lett. 109, 165301 (2012).
[2] T. Mizushima, Phys. Rev. B 86, 094518 (2012); ibid 90, 184506 (2014).
[3] Y. Tsutsumi, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 82, 113707 (2013).
[4] T. Mizushima, et al., Phys. Rev. B 90, 184516 (2014).