研究内容

 

物理学の研究には大雑把に分けて2通りの方向性があると私は考えています。一つは自然界を構成する根源的な要素を探求し、それを支配する基礎法則、統一的な法則を見い出すことを目指すもの。もう一つはマクロな数の要素が集合し、相互作用し、絡み合うことによって、はじめて顕れる多様な自然現象の成り立ちを理解することを目指すもの。後者のような物理学を英語で"condensed matter physics"といい、日本語では凝縮系物理学と呼ばれています。マクロな数の要素が織りなす現象の多くは、個々の要素を支配する法則を理解しただけでは説明することができず、要素還元論は無力です。多体問題のこのような側面をPhil Andersonは"More is different"という言葉で形容しました。要素の数が増せば、質的に新しいことが起こり得ます。この意味で凝縮系物理学は、今日でも"奇妙"で魅力的な新現象の宝庫となっています。 我々の行っている研究は凝縮系物理学の中でも、主に固体中の電子が織りなす多彩な現象をターゲットとしています。特に電子間のクーロン斥力が非常に強いため、従来のバンド理論等では記述できない強相関電子系と呼ばれる系(例えば重い電子系、酸化物高温超伝導体)に表れる新しい現象の理論的記述を目指しています。その他、量子1次元系(電子系、スピン系)の厳密解、低次元の場の理論(共形場理論など)の物性への応用なども行っています。
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